この記事に書かれていること
●大きな会社とは全く違う、小さな会社が取るべきポジショニング。小さな会社は「〇〇戦略で戦え」
●リピート率が劇的に改善する!3ヶ月に1度おこなうべき「ある取り組み」
●リピート購入を妨げる「お客様の心の抵抗」を外すためのステップメールの作り方
●「使ってくれたら絶対に売れる!」はネット通販失敗の入り口。その理由とは?
●売上「1億円の壁」「5億円の壁」「10億円の壁」のそれぞれを突破するために必要なスキル
西村公児さんインタビュー(Youtube版)
売れる通販プロデューサー 西村公児
山倉:本日のゲストはすばる舎から「小さな会社 ネット通販億超えのルール」を出版された「売れる通販プロデューサー」の西村公児さんです。
年商600億円の大手通信販売会社で、販売企画から債権管理までを16年ご経験。その後、化粧品メーカーの中核メンバーとして、5年間マーケティング業務に従事。顧客企業の販促支援で、レスポンス率を2倍にアップするなどの成果を上げています。
その後、独立され株式会社ルーチェを設立。独自メソッド「通販6ステップ法『ベルトコンベア理論』」を提唱し、クラアント様の売上に貢献されています。
売れる通販プロデューサー 西村公児さん(以下、西村):株式会社ルーチェ代表「売れる通販プロデューサー」の西村公児です。私は小さい会社の売上が「2年で1億、4年で10億」になるコンサルティングをしながら、企業と一緒に売上を作る活動をしています。
売上を作るだけでなく、その会社が持っている素晴らしい価値を世の中に届ける。そして会社が社員さんとともに成長・成功していけるように、共に歩みを進めるようなコンサルティングをしています。
「自分が何者なのか」を伝えないと売れない時代
山倉:この本は「ネット通販だけでなく、全てのビジネスに応用できる超実践的な売り上げアップのためのバイブル」だと感じました。
「自分を深掘りするための方法」に多くのページを割いている事が印象的です。ネット通販で億超えするために、なぜ自分を振り返る必要があるのでしょう?
西村:ものが溢れている時代において、価値を提供していくには「自分が何者なのか」を伝えていかないといけないですね。その背景はマーケティングの歴史と関係しています。まず「マーケティング1.0=良い製品を作れば売れる」という時代があって、次に「マーケティング2.0=市場のニーズに合わせてものを販売していく時代」がきました。
次に「マーケティング3.0=共創・体験が価値となる時代」がありました。現在はマーケティング3.0から4.0にシフトしていますが、モノからコト、コトから共有・共感、そしてをシェアするという流れが来ています。
—–人や社会的な意義にフォーカスすることで、価値は高まる
西村:そのため自分(=会社・販売者)が何者で、どんな考え方を持っているかがわからないと、価値を届けることは難しくなりますね。
私は、海外向けの「越境EC」の支援もさせていただいています。その場合には製品自体が「メイド イン ジャパン」であることや、「日本でランキングを獲得した製品です。」ということで、大々的に売り出したりします。
日本向けのマーケットの場合には、「人」や「会社」にフォーカスすることで、価値を高めて販売することが必要です。
山倉:「自分が何者であるかわからないと、選ばれない時代」なんですね。
西村:製品だけでは差別化をすることは、難しいですよね。ほとんど製品自体の価値や性能は違いがなくなってしまっています。「何を大切にして、ポリシーは何で、ブランドコミットメントは何か?」を伝えることが、お客様から求められていることだと思いますね。
越境EC・ショッピングモール・独自ドメインショップ、それぞれの違う戦略設計が勝つために必須
山倉:製品の良さを伝えるだけでなく、「なぜ自分がそれを売っているか」「どんな思いでこのビジネスをしているか」という部分を情報発信する必要があるのですね。
西村:「楽天」や「アマゾン」のようなプラットフォームで商売する場合には、その必要はないですね。しかし独自ドメインショップで通販をする場合は、リアル店舗と同じように「自分は〇〇屋さんです」と明確にしなければいけません。そうでないと、自分のお店や製品が選ばれないのが実態です。
山倉:「越境EC」「ショッピングモールでの出店」「独自ドメインショップ」にはそれぞれに適した戦略があるのですね。特に独自ドメインショップの場合には「自分」を発信していく必要がある。
西村:クライアントさんには楽天で出品されている方もいらっしゃいます。楽天で販売するときには「楽天の広告を使う」「ポイント○倍」「送料無料」というのが鉄板技です。そして、それ以上の対策は難しいです。
楽天の場合、「楽天カード」で商品を購入すると、たくさんポイントがつきます。そのポイントを使って、商品を購入されると、「売上は0円で商品を出荷しなければいけない」となってしまいます。
私もユーザーとして、そのように楽天を利用することもあります。そうなると「良い価値を提供する」ことよりも「価格が安いか」という消耗戦になってしまいますね。
見つけるのは大きな実績ではなく、小さなNo.1
山倉:自身や会社としてのコンセプトや、オリジナリティを発信する重要性がわかりました。しかし「自分にはそんな深い価値観は持っていないよ」と感じてしまう人もいる。見つけるためのヒントやきっかけはありますか?
西村:「自分には特別なことはない」というご相談はよく頂きますね。でも、分解して考えてみると、絶対にそれは見つかります。
なぜ見つからないのかというと、学校教育が影響しています。学校教育の中では「なぜやるのか?」という、目的を問われるような質問をされることはないですよね。そのような問いに答えたり、考えたりする練習をしてこなかったから「分からない」と感じてしまうんです。
その反面「どうするの?」「なにするの?」という質問は良くされますよね。「なにをどうする」という部分にはすごくアンテナが立っているのですが、「なぜするのか?」ということがスルーされてしまっています。
改めて「WHY」の部分を掘り下げることによって、自分の中に眠っている思いや、会社(組織)の中に隠れている価値観を引き出すことをやっています。
—-大きなものじゃなく、小さなNo.1を見つけて育てていく
西村:「特別なものはない」とおっしゃるのですが、幼少期や学生時代のことまで遡ると見つかることもあります。例えば「〇〇で1位になった」ことや、受賞や表彰はされていなくても、努力していたことなどに注目していてください。
そこにフォーカスしていくことで、小さなことでもNo,1が見つかるのです。それを原石にして、価値を大きくしていくためのサポートをしています。
山倉:そこを入り口に、「なぜ努力していたのか?」「なぜその価値観を大事にしているか?」を掘り下げていけばいいんですね。
西村:例えば「マラソンで勝ちました。」「3人中1位でした。」ということでも、その小さな喜びが、自分の次のステップや価値観に繋がっていると思います。自分が努力して認められて嬉しかった気持ちが、「どこから湧いて来たのか?」を探っていくことをしています。その視点で見ていくと、絶対皆さんの中に特別なものはありますよ。
小さな会社はレッドオーシャンで戦え
山倉:西村さんは年商600億の大手通販会社にもいらっしゃいましたが、大きな会社と小さな会社がネット通販で成功するためのルールは違うのでしょうか?
西村:大手のとるべき戦略はブルーオーシャン、ライバルが少ない新しい市場を作り出すことです。「広告」「認知」「ブランディング」にお金を使って、市場を0から作り上げていくんですね。それが大手のやり方です。
それと比べて中小企業の場合、売上がすぐに立たない「認知」「ブランディング」だけに月100万円以上をかけ続けられません。やはり初期の段階から、売れて利益が出る状態を作り上げていなくてはいけません。
そのために小さな会社が入り込む市場は「レッドオーシャン」。売れることがわかっている市場に「独自のコンセプト」や、「新しい切り口」を持って入っていきます。
大手はブルーオーシャンで「市場を作る」。小さな会社はレッドオーシャンで「切り口を変えて、売れているものを売る」という戦略が必要です。
山倉:大きな会社の戦略と小さな会社の戦略は全く別物ですね。
西村:その傾向はさらに大きくなっていくと思います。なりたい職業ランキングで「ユーチューバー」が上位にきているように、個人が情報発信することで、皆さんの共感・体験の共有を生み出しています。
小さな会社や個人でも、「何をメッセージとして発信をするのか」が重要な視点になってきますよね。大きな会社は「器・環境」を作り、方向性を示すこと。
山倉:小さな会社が伝えるメッセージは「自分はどんなことをやりたいのか」という自分視点のものと、お客様視点で「どんな価値を提供しているか」を伝えることの、どちらが必要でしょうか?
西村:どちらも必要になりますね。まずは「なぜ自分がそのビジネスをやろうと思ったのか」というビジョン、使命感などを伝える必要もあります。そして、「お客さんのどんな期待に応えていくのか」という発信も必要になりますね。
自社とお客様の双方でビジネスを作り上げていく。それが共感・体験・シェアということにつながってきます。やはり一方的ではダメだと思うんですよね。
リピート率が劇的に改善する「ある取り組み」
山倉:顧客目線での情報発信には、お客様の声を聞くことは大切ですね。お客様の声を聞くためには、商品を購入された方にヒアリングしてみることが有効な手段でしょうか?
西村:私がオススメしているのは、座談会を開いて、その音声を収録させていただくことです。その音声を公開するわけではありませんが、文字起こしして統計的なデータ分析をします。
どんなキーワードが出てくるのか、そしてそのキーワードがどうつながっているかを分析して、お客様にフィードバックすることをしています。
その座談会を「3カ月に1回やってください」とクライアントさんにはお伝えています。座談会を開くことで、直接お客様と接点を持つことができますよね。その場で「こんなものが欲しいです。」「こんなことをやってください」という要望も聞くことができて、それがメルマガのネタになることもあります。
そのため「座談会を開いて、なるべくお客様とリアルな場で会ってください」とアドバイスさせて頂いています。
山倉:同じ商品でも3ヶ月に1度のペースで座談会をされるのでしょうか?
西村:同じ商品の場合もあれば、そう出ない時もあります。アパレルのネット通販ではアイテムが違うことも多いです。各回ごとに「○回以上ご購入いただいたお客様に対して、〇〇について聞きたい」というテーマを設定します。
そして「ご都合の良い方は、ぜひご参加ください」とお客様にご案内します。イメージはランチ会のような感じ。お帰りの際にはお土産をお渡しする。そのような流れです。
「企業」と「お客様」というの関係性ですが、その距離を縮めるための活動でもありますね。
山倉:より親密な関係を作っていくための取り組みでもあるんですね。
西村:秋田にいるクランアントさんの場合は、お客様にバラ摘みを体験していただくようなツアーを開催したり、大曲の花火大会鑑賞ツアーをしたりしています。お客様と一緒に何かに取り組むというのが、現在のネット通販の流れになってきています。
—-お客様の声を聞くと1億円以上の売上が見えてくる
山倉:それをしていくことで、1億円超えが見えてくる?
西村:1億円以上が見えるようになります。お客様とリアルに接することでリピート率が劇的に変わってきます。お客様の声を深掘りして、それを改善するための商品・サービスを提供することができるからです。
「こんな商品を作りたい・販売したい」という企業側の意見ではなく、ユーザー目線での改善だとロスが少なく、最短距離で売上が上がっていきますね。
リピートにつなげるための「お客様の心の抵抗の外し方」
山倉:リアルな場でお客様と接する以外にも、ウェブ上や同梱物などでお客様との継続的な接点を作っていく必要があると思います。どのようなツールを活用したら良いでしょうか?
西村:「ライン@」などの流行り物はありますが、ベースはやはりメールになると思います。特にステップメールを活用するようにしています。ネット通販では、1回目のご購入から2回目のご購入につなげていく事が非常に重要なポイントですが、なかなか難しい現状があります。
「20%~30%の継続率」という目標を達成していくための方法をあらかじめ考えておかなくてはいけません。そのためには、お客様が2回目以降の購入の際に感じる「心の抵抗」を外していく必要があります。その抵抗を外す作業をステップメールを活用して行っていきます。
さらにステップメールだけでなく同梱物と合わせることで、継続率を高めるための施策に取り組んでいきます。
山倉:心の抵抗を外すステップメールは、販促やセールスのためのメールとは違うのでしょうか?
西村:違いますね。私は抵抗を外すためのメールを「教育系ステップメール」と呼んでいます。通常であれば、「こんな商品があります」「こんなキャンペーンをやります」というセールスに近いメールが多いですよね。
セールスのためのメールだと、メルマガ登録を解除されてしまいます。セールスのためのメールではなく「どんな世界観の商品なのか?」「この商品はどんなブランドシリーズなのか」「なぜこの商品を販売しようと思ったか」「お客様に対するブランドコミットメントは何か」ということを、メールと同梱物でお伝えしていきます。この過程を「教育」と呼んでいるわけです。
別の言い方をすれば「信用・信頼の醸成」ということですね。
山倉:売り込むためのステップメールではなく、いかに信頼関係を作っていくかを考えているのですね。
—-最後の1本までは、売り込み0のステップメール
西村:7本がワンセットになっている「教育系ステップメール」ですが、1本目~6本目まで販売ページのリンク先URLは一切入っていません。
山倉:それはすごいですね!
西村:最後の7本目で販売ページのリンク先を入れて、購入していただくための「機会を提供」しています。1本目には「これからのメールで、〇〇についての内容をお伝えさせていただきます」と書いて、次回以降の予告をしますが、一切セールスはしていません。
メール内には販売ページURLはないのですが、中にはわざわざ販売ページを探して購入してくださる方もいらっしゃいます。途中で購入していただく事を望んでいるわけではないのですが、待ちきれなくなって購入していただけることもありますね。
山倉:本当にお客様は心を動かされている証拠ですね。
西村:人の心理をしっかり掴めたらうまくいくと思います。
—-購入時がテンションMAX、その後は減点方式
山倉:お客様の購入までの心理的なステップを知るということでしょうか?
西村:お客様は買い物かごに商品を入れて、購入したときが最もテンションが高い瞬間ですよね。それから商品が届いて、開封して、と進むにつれてテンションは下がっていきます。夫婦と一緒です。結婚した時がテンションMAXで、それからは減点方式ですね。
山倉:そうなるとやはりテンションが下がってしまわないように、継続した接点が必要になりますね。
西村:テンションがMAXの状態を保っていくことはできないので、可能な限り緩やかな下降線になるように接点を作っておくことは大事ですね。
定期購入で縛らずに、自由でいてもらう心遣い
西村:お客様に継続して商品を買って頂くための施策は、「定期購入」だけではありません。前述の通り、テンションを下げないための取り組みが重要です。そして、お客様は「定期購入」という縛りを嫌がることもあります。
山倉:確かに「定期購入」というのは少し気持ち的な負担を感じます。
西村:自分のペースで購入したいお客様がおられます。私がまさしくそうです。「定期購入」という言葉が嫌いなんですよ。「なくなったら次を買うので!自分でタイミングを決めさせて」という気持ちになります。
ネット通販ビジネスをやっている僕がそう感じるということは、お客様の中にもそのように感じている方がいらっしゃるかもしれない。
この本にも書いてありますが、「定期購入が全てじゃない」という事をクライアントさんにはお伝えしています。私は「定期購入」という言葉ではなく、「サブスクリプション」という言葉を使っています。
山倉:その一工夫で、お客様の気持ち的な負担を減らすことができるのですね。
西村:「自分で選びたい」という思いを持っている方は、ちょっとした「縛られた感」を嫌がると思います。できる限り自由でいたいですよね。「○回購入を続けてください」というお願いは、「続けるんだけど、気持ち的にしんどい」という感情を引き出してしまうかもしれませんね。
このようなことがあるので、私のクライアント様には「定期購入」という言葉は使わず、他の言葉に置き換えるように伝えていますね。
「使ってくれたら絶対売れる!」は失敗の入り口
山倉:小さな会社がネット通販をする場合に、ありがちな失敗はありますでしょうか?
西村:1番多いのは「この商品は使ってくれたら絶対に売れるのに!」という商品を扱うことです。「使ってくれたら売れる」ということは、認知してもらったり、実際にサンプルとして使用してもらったりする必要があります。その結果、通常よりマーケティングコストがかかってしまいますね。
すでに目的と商品が繋がっているものだといいんです。「ダイエットといえば、これが効く」「おしゃれしたかったら、このアイテムが必須」というように。そのような商品だと、ほかの商品と切り口を変えることで、売れていきます。
しかし「使ってくれたら売れる商品」はお客様の頭の中のイメージで、目的と商品がまだ繋がっていない状況です。お客様の頭の中に、イメージを作り上げたり、引っ張り出してくること自体にコストがかかってしまう商品を扱うことは、よくしてしまいがちな失敗ですね。
さらにそこで「この商品は使ってくれたら絶対売れる」と一生懸命になってくると、お客様のことが見えなくなってきます。その結果、「お客様の問題を解決する」という前提を見失ってしまうことが起きますね。
ネット通販で億超えするために必要な3つの素質
山倉:本の後半には、「ネット通販スタートの1ヶ月目~3ヶ月目までに実践すべき法則」を、51個挙げていただいています。これを全て忠実に実践できれば、売り上げは上がっていきますね。
それ以外にネット通販で億超えするために必要なことありますか?
西村:3つあります。1つ目は「人が好きでないと、通販ビジネスに向いていない」という事です。お客様の心理がわからないと、気の利いた同梱物やサービスを提供できないですよね。例えば同梱物やメールなどに自分の書きたいことばかり書いてしまう。それではお客様の問題解決には繋がらないですよね。
山倉:自分よがりな発信になってしまいますよね。
—-「手間をかけたくない」という今の流れを掴めているか
西村:2つ目は「時代の流れを読む」ことが大事です。ネット通販ビジネスは右肩上がりで参入障壁は低いのですが、続けていける人とそうでない人がいます。続けていくためにはもし自分が興味がなくても、世の中の流れがどうなっているかを知っておく必要があります。
現在の世の中の流れは「とにかく手間をかけたくない」ということ。そういう流れが頭の中に入っているかどうかは、成功と失敗に大きく関わってきます。
山倉:いかに簡単なステップで購入できるか、商品自体も使いやすいものかどうかということを考慮しなくてはいけないですね。
西村:こんな例もあります。電話で注文をした時など、お客様の情報を復唱することがありますよね。「〇〇さんですね、住所は〇〇、電話番号は〇〇」など。それにイラっとするお客様もいらっしゃいます。「人の話を聞いてないの?」と。
もちろんマニュアルでは、「間違いがないように確認する」と書いてあるかもしれません。でもいまのITの技術を使えば、電話を受けた時点で誰からの注文なのかわかるので、復唱する必要はないんです。
山倉:そのようなニーズ、現代の人の心理を知っておきたいですね。
—-商品を好きになりすぎると、お客様を見失う
西村:3つ目は「商品を好きになりすぎてはいけない」ことです。客観的に商品のことを見る必要があります。お客様が抱える問題に対して、この商品はどのように機能するのか」が見えていなければいけない。「この商品すごくいいんですよ!」という一方的な目線ではうまくいきません。
商品から少し距離をおいて、お客様の抱える問題やトレンドを考慮して、「どんな切り口で見せると、売れていくかを」少し冷めた目線で見ていると、「売れるポイント」が見えてくるのではないでしょうか。
山倉:冷静さはネット通販をやる上で大事ですね。
西村:熱い気持ちで「売ってやろう!」と思ったら売れないですね。お客様の問題解決と、「〇〇についてコミットメントをします」というブランドコミットメントを発信していけると売れていきますね。
山倉:商品ありきで売り方を考えるより、「お客様の悩みがあり、それを解決するための商品を提供していくほうが売れやすい」ということはありますか?
西村:お客様の問題に対して、解決できる商品を用意してあげる。それが1番いいと思いますね。また商品がすでにある場合でも、商品にフォーカスするのではなく、「なぜ他社の類似商品が売れているのか?」という視点でみると良いですね。
最初は「どんな商品が売れているのか」をリサーチしますが、そのあとはすぐに「なぜその商品がいまの時代にマッチしているのか」という人の心理に注目して分析しています。
1億の壁・5億の壁・10億の壁とそれぞれの突破法
山倉:4年で10億円売り上げるようになるに、必要なスキルをあえて3つ挙げるとしたらどんな事でしょうか?
西村:1つ目に必要なスキルは「マーケティングの全体像を知る力」です。特にマーケティングの中でも「ファネル」の考え方を知らないといけないと思います。世の中的には「売れる仕組みを作る」と呼ばれていたりしますね。見込み客からファン客になっていただけるような構造を作っておくことがとても大事です。
例えば集客など、目の前のことだけに集中していてもうまくいかない。実はまだまだやることがあるぞ、ということを知っておく必要があります。
—-ビジネスは科学
西村:2つ目は「客観的なデータをもとに行動する力」です。例えば「赤字がどの時期に解消できるよう、スケジュールを立てているのか」などです。「思い」だけで行動しないということですね。
山倉:なんとなくの感覚で行動していてはいけないんですね。
西村:「儲かるからやったほうがいい」とかではなく、数字に基づいて行動する、科学的にビジネスを進めることが大事ですね。
山倉:目標設定をするときにも、各ステップの指標を定めて、それに対する取り組みを検討する必要がありますね。
西村:ビジネスなので、「全体像を把握する」「パワーバランスを平準化する」「各ステップに対して数字を設定する」「その数字を達成できたら次に進む」ということが大事です。
—-巻き込まなければ突破できない壁がある
西村:3つ目は「お客様・スタッフを巻き込みながら、価値を一緒に作っていく力」です。体験・共有はお客様を通して拡散されやすくなっています。例えば「インスタ映え」というのが最近話題ですが、それも「シェアする文化」ですよね。お客様自身が物を売っているわけではないのですが、「伝えたい」というニーズを持っています。
企業側としても「何を伝えたいのか」「その商品の魅力・見どころ」をお客様に説明していくことが大事だと考えています。人が嫌いではいけないということですね。
山倉:人に興味を持って、思いやりを持って巻き込んでいくことはポイントですね。ネット通販となると「システマチックに」という印象もありますが、人に関心を持つのは大事ですね。
西村:私のクライアントさんの中でも、売上は上がっているのですが、ブランディングでつまづいている方もいらっしゃいます。ブランド作りには紙媒体の「ブランドブック」が有効です。ターゲットに応じて、ブランドカラーやトーンを合わせることが必要になってきます。
そういった部分でも人に興味がないと、うまくいきません。インターネットマーケティングとか、集客ノウハウだけでは突破できない壁が出てくるんですよね。それがリピート率やLTV(ライフ・タイム・バリュー)に繋がっていきます。
—-1億の壁・5億の壁・10億の壁
西村:例えば1億を突破するために、ネットマーケティングの知識やIT技術を駆使して突破している方が多いです。しかし5億以上を突破するためには、リピート率が関係してきます。そうなるとマーケティングやITの知識だけでは突破できない。
さらに5億円から10億円に向かうときの課題としては、「チームをどれだけ巻き込めているか」というものがあります。せっかく売上が上がってきていたり、仕事ができるようになったとしてもチームの方が辞めてしまう事がことがあります。そうなると社長が、業務に介入しないといけなくなります。その結果、業績が低迷してしまう事態が発生します。
山倉:いかにお客さん・スタッフを巻き込んで盛り上げていくかが重要ですね。
西村:それができると5億円から10億円の壁を突破する事ができます。その状況になると社長がいなくても、うまく回っていくようになります。
ネット通販ビジネスでも「人に関心を持つこと」を伝えていきたい
山倉:最後に読者の方へメッセージをお願い致します。
西村:現在の日本でネット通販をする場合、「すでにある商品の切り口を変えて販売していくこと」が主流になっています。しかし、それ意外のことにも取り組んで欲しいと思っています。
冒頭でお話ししたように「Made in Japan」というブランドがあれば、越境ECで販売する事ができます。この先2年間、オリンピックまでの期間はインバウンドで海外の方に対しても、商品を販売する事ができます。例えばネットを活用した販売方法と、日本にある優れた伝統工芸を掛け合わせて販売することを考えてみても良いと思います。
つまり誰をターゲットにするかで、市場も広がっていくという事ですね。私は、越境ECやAmazonなどのショッピングモールなどの出店を考えるときにも、もちろん物を販売しているのですが「人との関係性が大事」ということをお伝えしています。
西村公児さんプロフィール
西村 公児
売れる通販プロデューサー
株式会社ルーチェ 代表取締役
【プロフィール・実績】
年商600億円の大手通信販売会社で販売企画から債権管理までを16年経験。 その後、化粧品メーカーの中核メンバーとして5年間マーケティング業務に従事し、 顧客企業の販促支援でレスポンス率を2倍にアップするなど成果を上げる。
株式会社ルーチェを設立後、独自メソッド「通販6ステップ法『ベルトコンベア理論』」を提唱する。さらに、国内の注目ビジネスモデルや経営者に焦点を当てたテレビ番組への出演や経済情報コンテンツにて記事連載。
平成28年3月25日、一般社団法人インターネット通販協会を設立し、理事長就任。 著書に「伝説の通販バイブル」(日本経済新聞出版社)、 「小さな会社ネット通販 億超えのルール」(すばる舎)など。 現在、多摩大学 経営情報学部の非常勤講師として「ビッグデータの活用法」について学生に教える
【メディア】
書籍 小さな会社 ネット通販 億超えのルール
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すばる舎 2,376円
伝説の通販バイブル
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日本経済新聞出版社 2,592円
インタビューを終えて
山倉:本書を読み進めながら、手順にそって自分史を作成していきました。他の「自分のコンセプトを探す」というものとは違うところは、他者の意見を取り入れるところ。自分だけの思考では気づけない自身の特徴や、「人からどのように見えているか」という視点を取り入れる事で、より世の中にマッチした形の自分の価値を発掘する事ができます。暖かく明るい人柄で、終始笑顔で取材をさせていただきました。